2022/05/28

 先進医療についてのお話。(1)

最近、特に『先進医療特約』についてご質問を受けることが多く感じ記事にさせて頂く事にしました。

先進医療については、平成16年12月の厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)、行政改革担当、構造改革特区・地域再生担当との「基本的合意」に基づき、国民の安全性を確保し、患者負担の増大を防止するといった観点も踏まえつつ、国民の選択肢を拡げ、利便性を向上するという観点から、保険診療との併用を認めることとしたものです。

もう少しカンタンに書きますと、先進医療とは、厚生労働大臣が認める高度な医療技術や治療法のうち有効性・安全性は一定基準を満たしてはいるものの、公的医療保険制度の対象外の治療を指します。


令和4年3月1日現在、84種類の治療が先進医療と定められています。



※引用:厚生労働省 先進医療の概要について

(厚生労働省のリンク先が閲覧できます。)



先進医療が行われることがある病気とは?

先進医療の技術は、以下のような病気で利用されることがあります(2021年6月現在)。

  • がん(陽子線治療、重粒子線治療など ※部位による)

  • 家族性アルツハイマー病(診断)

  • C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変

  • 全身性エリテマトーデス

  • 関節リウマチ など

なお、白内障手術に用いられてきた「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、有効性や効率性が十分でないとの判断で、2020年4月1日以降、先進医療技術から削除されています。このように、先進医療に該当する技術は定期的に見直され、削除や追加されることもあります。

どの病気であっても、先進医療以外の治療方法がないわけではありません。先進医療の内容について十分理解し、医師と相談をした上で受けるかどうかを決める必要があります。


先進医療にかかる費用はどれくらい?

先進医療にかかる費用は、技術ごとに異なります。ここでは一例として、2018年7月1日~2019年6月30日の期間の実績報告をもとに、いくつかの治療や診断にかかった費用の平均額をご紹介します。

■先進医療にかかる費用例

技術名実施件数1件あたりの平均額
陽子線治療1,295件約270万円
重粒子線治療720件約309万円
家族性アルツハイマー病の遺伝子診断8件3万円
腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術187件約87万円
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術147件約30万円

※厚生労働省 第81回先進医療会議資料「令和元年度先進医療技術の実績報告等について」を元に、試算。

これらの技術料など先進医療にかかる費用は、公的医療保険の適用対象外となるため全額自己負担となります。先進医療にかかる費用以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料など)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。つまり、一般保険診療と共通する部分は公的医療保険の対象となるため、健康保険制度における一部負担金(6歳から70歳未満は3割)を支払うこととなります。
また、月々の医療費を一定額以下に抑えることができる「高額療養費制度」も先進医療にかかる部分は対象外です。


先進医療特約の保障範囲

先進医療特約は、先進医療を受けた際の実費を保障するものです。この特約を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

治療を受けた時点で先進医療として認可されていること

先進医療技術の内容は、適宜見直しが行われています。先にご説明した「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」のほか、「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」も、検討の結果、先進医療技術一覧から削除されることになりました(2020年3月27日、厚生労働省告示)。

先進医療特約を利用するためには、あくまでも治療を受けた時点で、その治療法が先進医療としての認可がなされていることが必要です。たとえ、先進医療特約を付加した時点で先進医療に含まれていたとしても、その後、治療を受けるまでに削除されてしまった場合は、給付対象にはなりません。


各保険の定める保障範囲に該当すること

保険によっては、先進医療の一部のみについて保障を行うものもあります。例えば、がん保険に付加する先進医療特約の場合は、がんに関する先進医療のみが対象になっているといったケースです。

これは、先進医療特約に限ったことではありませんが、自分が加入している保険や、加入を検討している保険によって、保障の範囲が異なります。何が保障対象となっているのか、どんなときにいくら受け取れるのかといった詳しい内容について、しっかり確認しておくことが大切です。

また、給付金の請求は、体調を崩した本人に代わって、家族などが行うこともあります。家族間で加入している保険の内容や種類を共有できるように、ファイルやノートなどにまとめておくと安心です。


先進医療特約が付加できる保険

先進医療特約を付加できる保険は、主に医療保険とがん保険です。どちらも入院や手術などに備える保険です。どのような保険なのか、概要をご説明します。


医療保険

医療保険は、病気やケガによる入院や手術全般、医療費に備えるための保険です。手術1回につきいくら、入院1日につきいくらなどという形で、給付金が支払われるタイプのものが一般的です。短期入院にも備えることができる、入院1回につきいくらという一時金タイプのものもあります。


がん保険

がん保険は、がんに備えるための保険です。がんと診断された時点で一時金が支払われるもののほか、医療保険のように、手術や入院、通院などの際に給付金が支払われるタイプのものもあります。
がんによる入院は医療保険でもカバーすることができますが、がん保険に加入することで、手厚い保障でがんのリスクに備えられます。
がん保険に先進医療特約をつける場合は、対象ががん治療の場合のみなのか、先進医療全般なのかについて確認しておきましょう。


先進医療特約の必要性

「先進医療を受診した人が身近にいる」という人は、それほど多くないかもしれません。先進医療は受けられる病院が限られている上に、先進医療にかかる費用が全額自己負担であることから、利用する人はそれほど多くないようです。

具体的にどのくらい利用している人がいるのかというと、2018年7月1日~2019年6月30日までのあいだに先進医療の治療を受けた人は、全国で3万9,178人です(厚生労働省 第81回先進医療会議資料「令和元年度先進医療技術の実績報告等について」より)。

この人数を「少ない」と感じるか「多い」と感じるかは、それぞれの考え方次第でしょう。そもそも先進医療は、受けるかどうかを医師と相談しながら自分で決めるものです。
なお、2019年に実施された先進医療費用の総額は約298億円でした(厚生労働省「令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」より)。1人あたりの平均金額に換算すると約76万円ということになります。先進医療の中には、がん治療に利用される陽子線治療や重粒子線治療(部位によっては健康保険の範囲内)のように、数百万円という高額な費用が必要な治療方法もあります。

保険会社によって保険料は異なりますが、月数百円で、もしものときの支出に備えるというのは、「万一に備える」という本来の保険の在り方に合致したものであるといえるでしょう。
反対に、そもそも先進医療を利用するつもりがないという人にとっては、付加する必要のない特約だといえます。


先進医療特約を付加する場合の注意点

先進医療特約の付加を検討する際には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。特約を付加すれば安心だと思うのではなく、しっかり内容を確認しておきましょう。


上限金額はいくらまでか

先進医療特約は、先進医療を受けた際に、特約の上限内で実費を保障するものです。そのため、上限金額がいくらなのかは確認しておきましょう。最近の先進医療特約であれば、1,000万円や2,000万円を上限としている場合が多く、上限には比較的余裕があるといえるでしょう。また、先進医療特約の上限金額は、一般的には「1回」や「1つの病気に対して」ではなく、「通算」です。


保障範囲はどこまでが対象か

先進医療特約を医療保険に付加する場合、厚生労働大臣が承認した先進医療が保障の対象となります。一方、がん保険の特約として付加する際は、がんに関連する先進医療のみが対象になっている場合があります。
医療保険とがん保険、どちらも加入している場合は、医療保険に特約を付加しておけば安心でしょう。


更新型か終身型か

先進医療特約には、更新型と終身型の2種類があります。
終身型の場合は一生涯の保障が続きますが、更新型の場合は定期的に保障内容や保険料が見直される可能性があります。保険料の値上がりを避けたい場合は終身型、その時々に応じた保障に見直したい場合は更新型を選びましょう。
先進医療特約によっては、後から付加したり解約したりすることができるものがあります。その場合は、終身型にしておいて、保障内容が希望するものと合致しなくなったら見直しを行うことも可能です。

なお、たとえ主契約の医療保険やがん保険が終身型であったとしても、先進医療特約は更新型であるという保険も少なくありません。契約内容をきちんと確認しておきましょう。


直接医療機関に支払ってくれるか

先進医療特約が利用できたとしても、自分で医療費の支払いをした後で給付金を受け取る場合、一時的に多額の費用を用意しなければなりません。直接医療機関に対して医療費の支払いを行ってくれる先進医療特約を付加したほうが、万一の負担が少なくて済むでしょう。

ただし、直接払いのサービスは、「保険会社が指定している医療機関の場合のみ」というケースがよくあります。直接払いの医療機関がどこなのか、また、どのくらいの保障の範囲が直接払いの対象になるのか、確認しておきましょう。


先進医療特約は公的医療保険が利用できない先進医療に備える保険

先進医療特約は、公的医療保険でカバーできない先進医療を受ける際、その医療費を保障してくれる保険です。一定金額を上限に実費が保障される保険のため、治療の際に選択肢を広げられるようにしておきたい人にとっては、月数百円で万一に備えられるというメリットがあります。
保障範囲や保障上限金額などは特約によって異なるため、検討する際は内容をしっかり確認しておきましょう。



2022/05/13

2022年4月から140年ぶりに成人年齢が見直しがされました。



2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられました

 2018年6月に、民法の定める成年年齢を18歳に引き下げること等を内容とする「民法の一部を改正する法律」が成立しました。改正法は、2022年4月1日から施行されます。

 これにより、施行日である2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満のかた(誕生日が2002年4月2日から2004年4月1日までのかた)は、施行日に成年に達することになります。

~2002年4月1日生まれ

2002年4月2日~

2004年4月1日生まれ

2004年4月2日~生まれ 
 20歳の誕生日に成年2022年4月1日に成年18歳の誕生日に成年

 民法が定める成年年齢には、「一人で有効な契約をすることができる年齢」という意味と、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。

 未成年者が契約を締結するには父母の同意が必要であり、同意なくして締結した契約は、あとから取り消すことができます。また、父母は、未成年者の監護および教育する義務を負います。

 民法が定める成年年齢を18歳に引き下げると、18歳に達した者は、一人で有効な契約をすることができ、または、父母の親権に服さなくなることとなります。

 

 また、改正法では、女性の婚姻開始年齢(結婚することができるようになる年齢)についても見直しをしています。婚姻開始年齢は現在、男性18歳、女性16歳とされていますが、女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げ、男女とも18歳にならなければ結婚することができないこととしています。

 なお、2022年4月1日時点で既に16歳以上の女性(誕生日が2006年4月1日までの女性)は、引き続き、18歳未満でも結婚することができます。


その他の改正点の詳細・・・は↓のリンク先を参照して下さい。


(参考)民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について


     ↓ 法務省のリンク先に移動します。


 (参考)① 法務省ホームページ(民法改正、成年年齢の引き下げ) 



        
↓ 法務省のリンク先に移動します。

  (参考)② 特設ウェブサイト「大人への道しるべ」 








2022/05/09

 

「健康寿命」2019年は男性72.68歳、女性75.38歳


日常生活に制限のある期間は減少傾向が続く


 厚生労働省は、2021年12月に開催された第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会において、「健康寿命」の令和元年(2019年)値を公表しました。健康寿命は3年ごとに数値が発表されていて、令和元年(2019年)値は男性72.68歳、女性75.38歳となり、前回2016年の男性72.14歳、女性74.79歳と比べ、男性で0.54歳、女性で0.59歳延びました。また、2010年と比べると、男性で2.26年、女性で1.76年の延伸となりました。


皆様は、健康寿命と言う言葉をお聞きになった事がございますか?

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味します。

2019年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳で、平均寿命から健康寿命(日常生活に制限のない期間)を差し引いた日常生活に制限がある期間は、男性8.73年、女性12.06年となっています。前回2016年の男性8.84年、女性12.34年と比べ、男性は0.11年、女性は0.28年短くなりました。また、2010年以降、縮小傾向が続いています。
健康寿命と平均寿命の推移
健康寿命
(A)
平均寿命
(B)
日常生活に制限がある期間
(A‐B)
男性2010年70.42歳79.55歳9.13年
2013年71.19歳80.21歳9.01年
2016年72.14歳80.98歳8.84年
2019年72.68歳81.41歳8.73年
女性2010年73.62歳86.30歳12.68年
2013年74.21歳86.61歳12.40年
2016年74.79歳87.14歳12.34年
2019年75.38歳87.45歳12.06年
厚生労働省「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料(令和3年12月)」

健康寿命の延伸と不健康寿命の短縮の要因

 厚労省は、健康寿命の延伸の原因として、3疾患(悪性新生物、虚血性心疾患、脳血管疾患)の死亡数の減少、3疾患、関節疾患と他の疾患の受療者数の減少と受療者の不健康割合低下とともに、受療なし者(集団全体の6割)の不健康割合が低下している点などを挙げています。そして、不健康寿命の短縮については、死亡率低下による延伸分を、不健康割合低下による短縮分が上回っていたとしています。

 平均寿命と健康寿命の差が拡大すれば、医療費や介護給付費の多くを消費する期間が増大することになり、疾病予防と健康増進、介護予防等によって、平均寿命と健康寿命の差を短縮することができれば、個人の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待できますので、「健康寿命の延伸」は健康日本 21(第二次)の中心課題となっています。
(参考)
「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動(健康日本21(第二次))」とは、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸などを実現するため2000年度(平成12年度)から展開された「二十一世紀における国民健康づくり運動(健康日本 21)」に、新たな健康課題や社会背景などを踏まえて2013年度(平成25年度)からスタートした10年間の計画です。5つの基本方針のうち健康寿命の延伸については、健康寿命を男女ともに3年以上延伸し(2016年比)、75歳以上とする(2040年)ことを目標としています。